• 2012年3月17日:テキサス州オースティン 「SXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト)」フェスティバル レポート

    March 17th, La Zona Rosa 「SXSW FESTIVAL」
    2012年3月17日:テキサス州オースティン 「SXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト)」フェスティバル

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    秘密のヴェールを脱いだノラ・ジョーンズ新作初披露ライブ!

    2012年4月25日、5枚目のオリジナル・ソロアルバム『Little Broken Hearts(リトル・ブロークン・ハーツ )』を日本先行発売するノラ・ジョーンズ。その収録曲が初披露されるライブが、テキサス州オースティンで開催されるSXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト)で行われた。

    ダウンタウンを中心に、街全体がフェスティバルの舞台となるSXSW。公式発表されている会場の数は92、出演アーティストは2,000を越える巨大イベントで、ノラは2002年と2003年に出演経験がある。2002年はデビュー・アルバム『Come Away With Me(邦題:ノラ・ジョーンズ)』の発売翌月にあたり、世界的ブレイク、そして後のグラミー賞獲得のきっかけになったのがここでのライブと言われている。今回彼女が出演したのはLa Zona Rosa(ラ・ソナ・ロッサ)というキャパ1,000人前後の比較的大きめのライブハウス。だが、彼女の人気を考えれば極めて小さく、開場1時間前には彼女のステージを見ようと集まったファンや音楽関係者による長蛇の列ができていた。

    開場から15分ほど経過すると、ステージにはまずサポートメンバーが登場。ステージ上手側からベースやギターのJosh Lattanzi(ジョシュ・ラタンジー)、ドラムのGreg Wieczorek(グレッグ・ヴィーチョレック)、ギターのJason Roberts(ジェイソン・ロバーツ)、キーボードのPeter Remm(ピーター・レム)の4人がノラのサポートを行う。そして最後、大きな歓声に包まれながらノラが登場した。冒頭の1曲は「グッド・モーニング」。ドラムの脇に置かれた木琴のような楽器とアコースティック・ギターの音色が静かに重なり合い、ノラの伸びやかなボーカルを導いていく。新作のサウンドの特色となるポストロックにも通じる壮大なスケール感は、ジェイソンのギターとピーターのキーボードによって演出されていた。続く2曲目は「セイ・グッバイ」。ジョシュがアコースティック・ギターからエレキへと持ち替え、ドラムセットに移ったグレッグが小気味良いリズムを刻んでいく。シングル・カットにも適しそうなポップな曲調と構成で聴き手を惹き込んでいく。

    ノラがキーボードから赤いフェンダー・ムスタングに持ち替えたのは、アルバムのタイトルにもなっている「リトル・ブロークン・ハーツ」。黒と白のワンピースにボディーの赤がきれいに映える。フロアタムをベースにしたリズム上で歌われる虚ろ気なボーカルが曲名を象徴しているかのように思えた。その歌声は次の「彼女は22歳」にも続き、メローな雰囲気に包まれていく。「テイク・イット・バック」ではフェンダー・ムスタングを手放し、再び下手のキーボードに席を移す。浮遊感漂うサウンドからはじまるも、ひずみの効いたギターと徐々に手数を増していくドラミングによって曲調が変化していき、その雰囲気はそのまま「アフター・ザ・フォール」「4 ブロークン・ハーツ」にも引き継がれた。

    後半戦のはじまりは「トラヴェリング・オン」から。ノラはThe Little Willies(リトル・ウィリーズ)の公演(3月15日にSXSWの別の会場にて行われた)でも使用していたピアノへと移動する。弾き語るノラに寄り添うのは、小ぶりのアコースティック・ギターに持ち替えたジェイソン。そんな2人の親密な光景とは裏腹に、奏でられる旋律はどこか物悲しく感じられた。「アウト・オン・ザ・ロード」では、それまでの雰囲気を一変させ、アップテンポなビートがオーディエンスの体を揺さぶる。繰り返されるサビのフレーズと、淡いコーラスがマッチして心地良い。合間のMCではオーディエンスと会話を楽しみ、再びキーボードへと移動するとシングル曲である「ハッピー・ピルズ~幸せの特効薬」を紹介。インターネット上で唯一公開されていた曲で、ノラ自身もその出来映えには満足しているという曲。弾むようなメロディーが聴き手に歓声と拍手を促していった。

    ショーのクライマックスは「ミリアム」を聴いている最中に意識させられた。しっとりとしたバラードで、歌の軸はノラのピアノとボーカルにある。それだけでも十分に魅力的なのだが、ジェイソンの奏でるギターがそのスケールと魅力を何倍にも広げていく。Mogwai(モグワイ)やSigur Rós(シガー・ロス)を連想させるドラマチックな世界観は、ノラ・ジョーンズというミュージシャンの新たな地平を切り開いていくように感じられた。「来てくれてありがとう」と何度も繰り返し、最後の曲となる「オール・ア・ドリーム」へ。「ミリアム」からの流れで感動的に終わるのかと思いきや、ダークで荒涼とした空気が辺りに広がっていく。何を意図してこの曲を締めに持ってきたのかは想像するしかないのだが、この感覚はアルバムを通して聴くことで体感することができる。なぜなら今回のライブはアルバムの曲順のままに行われているからだ。そこから何を読み取るのか。それは聴き手によって異なるのだろう。

    10年前、名門ジャズ・レーベル、ブルーノート・レコードからの期待の新人としてデビューした時から、その音楽性は変化を重ね続け今に至っている。新作の初披露というだけでなく、そういった側面もあるからこそSXSWでのライブが大きく注目されたのではないだろうか。のめり込むように聴き入っていたオーディエ ンスの反応は上々で、終演後には大喝采が巻き起こった。ここで見られた新しいノラ・ジョーンズの姿は、これからスタートする世界ツアーを通してヴェールを脱いでいくことになる。世界でどう評価されていくのか、そしてこれから彼女がどう変化していくのか。新しい一歩がいよいよ踏み出される時が来た。

    <セットリスト>
    1. グッド・モーニング / Good Morning
    2. セイ・グッバイ / Say Goodbye
    3. リトル・ブロークン・ハーツ / Little Broken Hearts
    4. 彼女は22歳 / She’s 22
    5. テイク・イット・バック / Take It Back
    6. アフター・ザ・フォール / After The Fall
    7. 4 ブロークン・ハーツ / 4 Broken Hearts
    8. トラヴェリング・オン / Travelin’ On
    9. アウト・オン・ザ・ロード / Out On The Road
    10. ハッピー・ピルズ~幸せの特効薬 / Happy Pills
    11. ミリアム / Miriam
    12. オール・ア・ドリーム / All A Dream

    文:船橋 岳大/Takehiro Funabashi
    写真:森リョータ

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