• 2010年4月21日:サンフランシスコ「フィルモア・オーディトリアム」公演レポート

    April 21,CA The Fillmore,San Francisco
    2010年4月21日:サンフランシスコ「フィルモア・オーディトリアム」公演

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    4月21日(水)、最新アルバム『ザ・フォール』の公演が伝統的ライブ・ハウス、フィルモア・オーディトリアムにて行われた。過去にグレイトフル・デッド、ジャニス・ジョプリン、レッド・ツェッペリンやザ・フーなど蒼々たるアーティストが演奏しているこの会場。その当時の写真が飾られた会場ロビーはソールド・アウト公演とあって、この日を待ちに待った多くの人でごった返していた。
    午後8時頃、オープニング・アクトとして登場したザ・フォール・ツアーのバンド・メンバーであり、ノラと旧知の仲であるサーシャ・ダブソンは、地元カリフォルニアでのライブとあってサックス奏者の弟も途中参加し、リラックスした美しい演奏を見せてくれた。

    午後9時過ぎから始まったノラのライブは「愛の名残り(I wouldn’t need you)」で幕を開けた。黒のタイトなトップとシルバーのショート・スカートに真っ赤な太めのベルトという出で立ちで、いつもお洒落なステージ衣装を見せてくれるノラは本日も期待を裏切らずキュート且つ大人っぽいファッションであった。現在配信中のiTunes Originals (http://itunes.apple.com/jp/album/itunes-originals/id353096921)によると、「愛の名残り」は前作のツアー中に「カム・アウェイ・ウィズ・ミー」のギター・リフとして演奏されていたメロディーから着想され生まれた曲との事。ノラの赤いフェンダー・ムスタングによるこのギター・リフでショーが始まるとは、ピアノ演奏のイメージが強かった彼女の昨今の音楽的変遷を象徴しているかのようであった。

    コンサート前半は最新アルバムからの楽曲を中心に編成され、中央のギター位置からステージ左に置かれたエレクトリック・キーボードに移動すると、ファンからの声援に「スカートの下にはショーツを履いてるから期待しても無駄よ」と冗談を言いつつ、最新アルバムからのヒット曲「チェイジング・パイレーツ」や最新ビデオが公開になったばかりの「ヤング・ブラッド」などを演奏した。
    再びギターを持って、セカンド・アルバム『フィールズ・ライク・ホーム』からトム・ウェイツ作の「ロング・ウェイ・ホーム」を披露。ベットサイド・ランプが置かれたアット・ホームな雰囲気のステージによく似合う楽曲であった。続いてステージ向かって右に設置されたアップライト・ピアノへ移ると、サード・アルバム『ノット・トゥ・レイト』から「シンキング・スーン」、そしてなんとザ・キンクスのカバー「ストレンジャーズ」などを披露した。ノラは毎回のツアーで様々なカバーを聞かせてくれるが、このザ・キンクスのカバーにも意表をつかれ彼女の音楽的幅の広さを改めて実感させられる演奏でもあった。また、ギターが比較的後期になって始めた楽器であるのに対しピアノは7歳頃に習い始めたとあって、水を得た魚のようなピアノの演奏に聴衆も歓声を送らずにはいられなかった。初々しいギター演奏も、それでまた味があるのだが。

    「次は明るめの曲よ!」という前置きで始まったのが、本人もキャッチーなシングルと形容している『サンライズ』。そして「愛犬のために作った曲」であるという「ひとときの恋人(Man of the Hour)」では、「厳格な菜食主義者とヘラヘラした怠け者、どっちもダメだと思ったから、私はあなたを選んだわ」という下りのところで「この街の人は良くわかるわよね」と一言入れ、笑いを誘った。ヒッピー文化のメッカであり環境問題への関心が高いサンフランススコならではの一幕であった。
    代表曲「ドント・ノー・ホワイ」はピアノとバック・ボーカル2人のみのシンプルな編成で、さらにぐっと大人な雰囲気のアレンジになっており、名曲を新しく生まれ変わらせていた。
    コンサートの最初から、「この会場にはノスタルジックな思い出があるの。」と感慨深げに語ったノラ。彼女は2002年にこの会場でウィリー・ネルソンのオープニング・アクトとして4公演に出演した。その当時のウィリーの写真は、多くの著名人の写真と並んで会場のロビーに飾ってある。ノラはライブ中「本当に今日フィルモアでライブができて光栄です。ありがとう。」と何度もコメントしていた。最後はアンコールを2度も行い、この公演がいかに特別であったかが心底伝わった、フィルモアの歴史にも残るであろう素晴らしい公演であった。本ツアーは6月のヨーロッパ公演も含め、2010年8月までの日程が発表されている。

    文・写真: Mai Sasaki

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